眼内悪性リンパ腫について
- Contents:
-
- 1.眼内悪性リンパ腫とは
- 2. 疫学
- 3. PVRLの遺伝学的特徴
- 4. 眼内悪性リンパ腫の診断
- 5. 眼内悪性リンパ腫の硝子体生検の方法
- 6. 治療
- 7. 再発・難治性VRL
- 8. 今後の課題
眼内悪性リンパ腫の診断
細胞数が少ない、あるいは試料が低品質であるために PVRL の細胞学的証拠を欠く場合、この診断は困難である可能性がある。このような場合、眼科臨床検査硝子体中のIL-10/IL-6濃度比(>1)、IgH遺伝子再構成、フローサイトメトリー(FACS)によるB細胞系リンパ腫の表現形(γ鎖/λ鎖比の偏移など)の複数の検査による証拠に基づいて、PVRL 診断は行われる。リンパ腫の診断において、硝子体液のMYD88 L265P変異やCD79B変異によって補助診断がされてきた。
脳 MRI、細胞診および理想的にはフローサイトメトリーを含む髄液検査、全身の造影CTまたはPET-CT、および骨髄生検が最初のステージングに必要である。
病態は、B 細胞受容体(以下、BCR)シグナル伝達は、B 細胞系リンパ球細胞の生存、活性化、増殖、成熟および分化に関する中心的役割を担っており、特に B 細胞性非ホジキンリンパ腫(B-NHL)では、BCR シグナル伝達経路であるBrutonチロシンキナーゼが恒常的に活性化していることが知られている。眼内悪性リンパ腫は、95%はB 細胞性非ホジキンリンパ腫であり、Brutonチロシンキナーゼが活性化している。中枢神経系原発悪性リンパ腫患者に対してBTK阻害剤を投与した成績としてORR 77%と有効性が報告されている(Grommes et al, 2017)。
BTK阻害剤は中枢移行性が良好であり、悪性リンパ腫の中枢病変に対して有効な治療薬の1つである。本研究では、Bruton型チロシンキナーゼ阻害剤を用いることで、効率的に中枢再発を抑制することを目的とするBTK阻害剤の治療効果が見込めると考えた。眼内悪性リンパ腫の寛解後 complete remission のBTK阻害薬の維持療法 maintenance therapy は、肉眼的に検出不可能である微小病変に対して、さらに高い効果が期待できる可能性がある。