眼内悪性リンパ腫について

治療

眼局所治療

局所治療の目的は、全身毒性なしに眼内の寛解を誘導し、視力を改善することである。局所寛解の達成によって中枢神経系再発のリスクが低下するかどうかは、証明されていない。

1)MTX眼内注射

眼内悪性リンパ腫のMTX眼内注射の治療成績は、26例44眼の95%の症例はMTX眼内注射により眼内病変の寛解が得られた。MTX硝子体注射(400μg/0.1mL) を週2回1カ月、週1回を1カ月、月1回を9カ月間行うことになっているが、平均6.4回(2~16回、95%の 症例は13回以下)の注射で臨床的寛解が得られたと 報告されており、10回程度の注射で多くの症例は 寛解が得られる。しかし同報告では、MTX硝子体 注射により26例全例で眼病変の寛解が得られ眼局所での再発は認めなかったが、しかしながら、14例(54%)は、脳中枢神経系や全身への再発を認めた。生存中央値は、17ヶ月(3ヶ月~84ヶ月)であり、予後不良であった(Br J Ophthalmol. 2008;92:383-8)。したがって、MTX眼内注射はVRLに対してきわめて高い有効性 があるが、CNSリンパ腫の発症は抑制できない可能性がある。

2) 放射線眼局所治療

放射線眼局所治療の成績は、初発眼内悪性リンパ腫に対して、眼局所照射(35~40Gy)で、寛解率(87%)が得られた。しかしながら、2年無病再発生存率は50%程度であった。
外部照射ORT(30~40Gy)は、代替局所治療法であるが、唯一の第一選択治療法として提供されることはまれである。白内障と放射線網膜症のリスクは、低線量(30Gy未満)のORTで減少する。


これまでに、中枢への腫瘍の微小浸潤を抑制するために、これまでにいくつかの臨床試験が行われてきた。欧米では、眼局所放射線治療と化学療法を組み合わせた治療を行った。しかしながら、中枢浸潤再発は53%と中枢再発は抑制できなかった。我々は、眼内悪性リンパ腫に対してMTX眼内注射+化学療法+全脳予防照射を行い、更に最終報告として眼内悪性リンパ腫の4年無病再発生存率を72.7%、中枢再発10%と大きく改善したことを報告した。一方で、4年以内の再発率は27.3%と一定数再発する患者がいること、高齢者では治療強度の強い化学療法が出来ない、放射線治療の影響でグレード2以上の白質脳症が75%に生じており、認知機能が低下するといった重要な臨床上の問題点があり、今後、新たな治療が期待される